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	 からくりシリーズ第3弾として“段返り人形”が発売されましたが、今までとは違うアクロバティックな動きに目を奪われました 
	湯本:実はこの動きを作り出す源として、江戸時代は水銀を使用していましたが、今回は危険な物質のため代用品を使用することにしました。しかし、代用品が仕上がるまでは難航を極め、試作品だけでも6~7体も作っては壊し・・・というプロセスを踏みました。 
		
		
		大変な道のりでしたね。ところで、代用品には何を使用されたのですか? 
		湯本:「鉄球」を使って実現させることができました。動作方法につきましては現在特許を申請中ですので、このくらいで勘弁していただけますか。 
		
		申請中ですか・・・でも、からくりファンの皆さんには、こっそり教えていただけませんか?! 
		湯本:(苦笑)わかりました。仕組みの基本は、パチンコの釘と玉の関係を想像していただけるとわかりやすいと思います。人形の体の中で、粘性のためにゆっくりと移動していく水銀と同じように、重心を移動させるためには、鉄球を体の中でゆっくり移動させなければなりません。これを実現するために、釘の間を跳ねながら落下していくパチンコ玉のように、鉄球の通り道に交互に羽状の突起を出し、その間を鉄球が落下していくという方法を考えました。  | 
		 
		▲両手で立った状態の段返り人形  |  
		 
	金子:構造は実に単純なのですが、これをほどよいあんばいに調整するのは本当に苦労しました。特にパチンコの「釘」に当たるパーツの間隔や数を調整するのは、実験を繰り返して微調整していくしか方法がなく、「これで本当にゴールにたどり着けるのか」と悶々としながら、実験と調整を繰り返す日々でした。何とか満足できる状態にたどりつけたのは、実験を開始してから3か月後のことでした。 
	苦労の連続であったようですが、段返り人形の開発にあたり、これまでとは違った秘話などがありましたら是非、教えてください 
	金子: とにかく「うまくできるかどうかわからない」という点でした。これまでの作品は、カムやクランク、ギアの組み合わせで動作を制御するというものでしたので、機械的な設計さえクリアすれば、何とか商品化にこぎつけることはできるという見通しが持てたのです。しかし、「段返り人形」に限っては、メカの組み合わせだけでは実現できませんでした。 
		また、内部構造の問題をクリアし、ようやく製品化に向けて全てが具体的に動き始めましたが、量産化に当たって新たな問題も浮上してきました。人形を組み立てて動かすと、段返りの途中でだんだんずれていき、段から落ちてしまうのです。 
	
	 人形の体に腕をつける組み立て作業はそれほど難しくありませんが、人形が手をついてとんぼ返りをするときに、左右の掌が床にきちっと平行に接するように調整しないといけません。これが少しでも狂うと、まっすぐ段返りせずに少しずつずれて最後は台から落下してしまうのです。 
	
	湯本: 江戸時代の段返り人形は、外気温や湿度の変化に対応して、ものすごく微妙な調整を要するものだったそうですが、ここまで微妙なものだということには私達も正直驚かされました。 
	
		
		
		それでは最後に、からくり段返り人形の魅力を教えてください 
		湯本:江戸時代の見世物として人気を博した人形のユニークな動きを実際に体験していただければと思います。途中で「止まっちゃうかも!?」というどきどき感を与えつつも、しっかり宙返りするおもしろさを存分に味わってください。  | 
		 
		▲鉄球の重さでトンボ返りを繰り返す  |  
		 
	ありがとうございました 
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