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タネの話 写真・文/埴沙萌(はにしゃぼう)

はみだしモノ、バンザイ!~進化のパイオニア

 写真(1)は、オオイヌノフグリの花と芽ばえです。1月10日に撮影しました。オオイヌノフグリの芽ばえは、写真(2)のように、ふつう8月の終わりころからはじまって、冬がくるまでには、大きな苗になっているのですが、1月に芽ばえるとは、かなりのノロマものです。それに、1月の低温のなかで芽ばえているのですから、寒さに強いノロマものということになります。
 そして、オオイヌノフグリの花は、3月から4月ごろに咲くのですが、これは1月に咲いて、気のはやいせっかちな花です。ということで、この芽ばえと花の写真は、のろまとせっかちな、はみだしモノがいっしょに写っている珍しい写真なんです。        

 植物が種子をつくるときには、花粉がメシベの柱頭について、雄性と雌性の遺伝子が結合して、新しい組み合わせになるわけですが、その結果、両親に似ているけれども、まったく同じではない種子、子どもが生まれるということになります。
 両親と同じではない程度が大きいと、変わりモノ、はみだしモノと言われるのですが、そのはみだしモノこそが、これまで両親が住めなかった所で生活できたり、これまでとはちがう季節に花を咲かせたり、進化のパイオニアになっているのですから、はみだしモノ、バンザイです。

 野山の木や草の種子には種(しゅ)を維持して、さらには進化するためのプログラムが組み込まれているんですね。芽ばえの時も、花が咲く時も、品種改良で統一化されている野菜や、園芸花の種子とは、大きなちがいです。
 下の写真(3)は、霜柱のなかの西洋タンポポの芽ばえですが、これも、はみだしモノです。こういったはみだしモノから、写真(4)の、標準タイプのものよりも低温につよい、さらには冬にも花を咲かせるタンポポが生まれてくるかも知れません。

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