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タネの話 写真・文/埴沙萌(はにしゃぼう)

ヘソの緒で旅をするタネ

 写真(1)は、アオイスミレの果実を切ったものです。なかに生長したタネがはいっています。そのタネについた半透明のゼリー状のものが、まわりの果実の壁につながっているのが見えるでしょうか。

 これは、お母さんから栄養分をもらう、動物のヘソの緒とおなじものです。植物もタネのたまごは、ヘソの緒をとおして、お母さんから栄養分をもらって生長して、タネ(あかちゃん)になります。

 ヘソの緒がついていたあとは、ヘソですが、木や草のタネにもヘソがあります。エンドウやソマラマメ、ダイズなどのタネに黒い部分がありますが、それがヘソです。ドングリやトチノキの実の「おしり」といっている部分は、お尻じゃなくて大きなヘソです。

 タネは、お母さんのおなか(果実)から旅だってゆくときには、たいていヘソの緒がとれていますが、ヘソの緒がついたまま、旅だつタネもあります。アオイスミレやエンレイソウなどのタネには、翼も羽毛もないので、風で飛んでゆくこともできません。でも、アリがはこんでくれます。ヘソの緒は、アリの好きな食べものです。果実を、食い破ってヘソの緒を食べるアリもいます。なかにはヘソの緒だけ食べて、タネをはこんでくれないアリもいますが、雨が降ったときに流されて、遠くまで旅をするタネもあります。

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