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大人の科学実験村 第8回 本邦初!?富士の頂にて、宇宙線「ミューオン」を霧箱でキャッチする!

今回参加の村民

編集部員3名と、今回は霧箱の専門家、戸田先生とその息子さんに参加していただいた。。

戸田一郎先生

科学の面白さを実験で紹介するサイエンス・プロデューサー。

戸田武宏さん

父の霧箱をさらに改良開発中。今回はダイエットも兼ねて参加。


協力/有限会社ラド 文/かなざわいっせい 写真/ミワタダシ イラスト/加藤 徹

富士山の5合目、澄み渡る青空のもと、湯本村長より開村が高らかに宣言された。今回のテーマは、大人の科学マガジンVol.09のふろくのプラネタリウムにちなみ、宇宙から飛来する「宇宙線」。放射線を観察する装置「霧箱」を、わざわざ山頂まで運んで、宇宙線をとらえようというのだが…。

開村以来、もっとも
高いところで実験開始!

霧箱って何?

霧箱は放射線の飛跡を見る装置だ。アルコールの気体(過飽和状態)の中を通った放射線は、飛行機雲のような飛跡を残す。1911年、イギリスの科学者ウイルソンが霧箱を発明。彼は霧箱を使った研究でノーベル物理学賞を授与された。

▲【放射線が作る
アルコールの霧】

【ウイルソン型霧箱】▲

装置の底板を急に下げ、装置内の気圧を一瞬下げることにより、アルコールの過飽和状態を作る。

 8月20日午前10時、大人の科学・実験村役人3名と村民2名、計5名は富士山5合目(標高2400m)の山小屋ベランダに集合した。たなびく雲を見下ろしながら、湯本村長は第8回開村宣言を発した。大人の科学マガジンVol.09のふろくはプラネタリウムである。そこで我々もテーマを宇宙にした。遥か彼方の宇宙から飛んで来る放射線を観察する、という。

 「それは宇宙線ミューオンだ。正体は電子の200倍ほどの質量を持った素粒子。しかし、その大きさはなんと1兆分の1ミリ以下。電子顕微鏡でも見ることができない極小物質をスグレモノの装置『霧箱』で観察しようというのだから、今回はほんとに凄いぞ!」

 …と村長湯本はぶっ放し、独自に開発した高性能な拡散型の「霧箱」を持参してくれた戸田先生を紹介。一礼した戸田先生は、ハゲの金子助役、顎にチョロリと無精ひげの西脇主任の二人に少々の不安を抱きながら、「霧箱」の説明を始めたのである。後にその不安は的中する⋯。

5合目。2400m
霧箱の材料は、ドライアイスとアルコールだけ!
5 暗幕をかぶせて準備O.K! 6 本当にこんな簡単な装置で放射線が見えるのか? 1. 登山前の村民たち。まだ表情に余裕がある。2. 使う分だけドライアイスを切断する。3. スポンジテープや黒い紙にアルコールをかける。4. ラップを張る。すき間があると中の霧が乱れる。5. 暗い方が観察しやすい。暗幕をかぶる。6. 明るいLED仕様の懐中電灯で黒い紙を照らす。

 「簡単に言えば、容器内のアルコール気体に温度勾配を作り、下部空間を過飽和状態にするということです。宇宙線がそこを通ると、窒素や酸素分子の電子が弾き飛ばされ多量のイオンが発生し、そのイオンにアルコールの分子が引き寄せられ、イオンを核として凝集し滴になります。ですから結果として、宇宙線が走った道に沿いアルコールの白色の霧ができる。つまり宇宙線の飛跡です。それはしっかりと目に見えます。分かりましたか?」

 助役金子と西脇主任は、分かったような顔をしているが、恐らくそうではないと思われる。理解しているのは戸田先生のご子息・助っ人村民の武宏さん一人ではなかったか…。

 しかし、さすが村長湯本である。「まず実際に実験してみることだ、その結果に驚きそして感動してから改めて宇宙線物理学追究への一歩を踏み出せばいい!」と述べた。

 8期連続の村長湯本、まとめ方がうまい!

まずは富士山の5合目で実験開始!

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